輝きと青い鳥

「輝き」は何処から来るものなのか

第1話冒頭で千歌が呟いた言葉です。この記事では、彼女(ひいてはAqours)がその答えに行き着くまでのプロセスについて考えます。

 

1期を振り返ってみます。「輝きたい!!」と気持ちを露わにした千歌。同じように思っていたのは彼女だけではありませんでした。挫折し、何をやっても楽しくないと感じていた子。スクールアイドルをやりたくても、姉に遠慮して言い出せなかった子。その大事な友達の可能性を見極め背中を押すも、一方で自分もスクールアイドルに魅せられた子。常人と堕天使との間で揺れ動いていた子。過去の失敗を悔やみ、わだかまりを抱えた子たち。千歌と一緒に物事をやり遂げたいと強く心に決めていた子。皆一様に迷いや葛藤を抱えていました。それらを解消し9人となったAqoursは、μ’sの出身校である音ノ木坂学院を訪問したことを機に「『0』を『1』にしたい」という意見で一致します。そして「辛いことも苦しいことも、全部を楽しんでみんなと進んでいくことこそが『輝く』ことなんだ」と結論付け、「君の心は輝いてるかい?」と問いかけ、物語を締めくくりました。

 

ではその「輝き」は一体何処から来るものなのか。

 

2期13話で千歌が言います。

 

「最初からあったんだ!私たちが過ごした時間の全てが『輝き』だったんだ!」

 

この言葉からはメーテルリンクの童話「青い鳥」を連想させられます。

老婆に青い鳥を探してほしいと頼まれた兄妹が様々な国へ青い鳥を探しに行きます。しかし、見つけても国を出たら黒い鳥に変わったり死んでしまいます。母の声でふと我に返り、なぜかベッドにいた2人が何気なく鳥籠を見ると、なんとそこには元から飼っていた鳩から変貌した青い鳩だったのです。「幸せはすぐ傍にあっても、中々気付かないものだ」と老婆は教えてくれていたのです。

 

 

ここで注目したいのは、「『幸せがすぐ傍にあった』ことが分かった」ではなく「様々な場所へ青い鳥を探しに行った」という事実についてです。

作中で2人が訪れた場所は、5つありますが、その中でも

①思い出の国

②未来の国

の2つに強い関わりがあると感じました。

 

①思い出の国

「思い出の国」では、既に亡くなった祖父母に逢います。「もう逢えないと思っていた」と兄妹が言うと、祖父母は「生きている者が思い出してくれれば、目が覚めて、いつでも逢えるんだよ」と言います。そして、その国にいた青い鳥を捕まえるも、国を出るとすぐに黒い鳥に変化してしまいました。

 

思い出とは、言い換えれば「過去にあった事実」。Aqoursにとってのそれは、東京スクールアイドルワールドでの「得票数0」という結果です。それなりに大きい会場で0票、今までダンスも歌も頑張って練習してきたのに0票であったことに、千歌は悔しいと叫びました。しかし、その悔しさがバネとなり、「あの頃のままで終わらせたくない」⇒「『0』から『1』へ」と目標を新たにすることができました。また「いつでも逢える」とは、彼女たち(特に千歌)にとって「0票」だったという悔しさはとても大きいもので、忘れられないことだと結び付けられます。2期12話で「0票」と記された紙を風に飛ばしたのは、もう自分たちはその先のステップへ進めたんだと自負したからで、同時にそういうこともあったから成長できたと思えたからなのでしょう。

では青い鳥が「思い出の国」を出た途端に黒くなってしまったのはどうでしょう。これは2期7話において廃校が確定しまったことへの絶望ではないか、と考えます。この時点で千歌は「今はラブライブ!なんてどうでもいいと思ってる」と打ち明けました。学校を救えなかったことで、彼女は再び悔しさを滲ませると共に、半ば投げやりな状態でした。ところが、生徒たちから「優勝して浦の星の名を残してきてほしい」とエールをもらい、投げ出す寸前で復調しました。鳥は黒くなっても、死には至らなかったのです。

 

②未来の国

「未来の国」には、これから産まれてくる子供たちが大勢います。そして子供たちは、それぞれ「誕生してからの自分」を用意していて、個別に考えを持っているのだと知ります。

 

 

「これから産まれてくる子供たちは誕生してからの自分を知っている」、これ即ち「未来の僕らは知ってるよ」へ繋がるのではないでしょうか。特に印象的なのが以下の歌詞です。

 

未来の僕たちはきっと 答えを持ってるはずだから ホンキで駆け抜けて!(「未来の僕らは知ってるよ」)

 

これ以上の説明は不要でしょう。それから、そんな子供たちを、「時のおじいさん」なる人物は大きな「船」で地球へと送り出すことも付け加えておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改めて13話についてですが、挿入歌「WONDERFUL STORIES」にも青い鳥が登場します。

 

「青い鳥探してた 見つけたんだ でも籠にはね いれないね 自由に飛ばそう 

答えはいつでも この胸にある」(「WONDERFUL STORIES」)

 

 青い鳥=「輝き」、籠=「自身」、と捉えれば、「輝きを外へ解き放とう」となります。

他にも同じ意味合いを持つ楽曲があります。

 

ヒカリになろう ミライを照らしたい 輝きは心からあふれ出すよ」(「MIRAI TICKET」)

「光る風になろう We got dream」(「未来の僕らは知ってるよ」)

 

自分達が希望を届ける光そのものになろうという旨の歌詞があり、「心からあふれ出す」ともあります。

また繰り返しになりますが、2期7話において廃校が決まった際、生徒から

 

ラブライブ!に出て優勝して、学校の名前を残してほしい!」

 

と言われ千歌が返した言葉は

 

「優勝する!アキバドームも決勝も関係ない、優勝する!」

 

でした。優勝すれば、学校の名前は勿論Aqoursの名もその歴史に残ることになります。そして、憧れ・目指すべき存在として語り継がれていく。ラブライブ!を目指すものとしては、それはもう「輝いて」見えるでしょう。Aqoursにとっての憧れがμ’sで、Saint Snowにとっての憧れがA-RISEであったように、Aqoursもまた後世のスクールアイドルの憧れ、すなわち「光」になり得るのです。

 

輝きはどこから来るのか。それは自身の心からであり、究極的には彼女たち自身が「輝き」そのものになることなのです。そして、自分たちが楽しんでいる姿、その「輝き」を目にした他の人に「輝いている!」と感じさせることができて、初めて「輝く」ことになるのです。

 

 

 

 

 

 

 

※「青い鳥」のお話については以下のページを参考にしました。大変お世話になりました。この場でお礼申し上げます。

 

「青い鳥」物語